J Mascis(J・マスキス)は、Dinasaur Jr.(ダイナソーJr.)として12枚のアルバムをリリースしている。またソロでは、Upsidedown Cross、J Mascis and The Fog、J and Friends、Witchなどのバンドで10数枚のアルバムと7インチレコードをリリース。彼の最新のプロジェクトは、ロサンゼルスの伝説的なジャズパンク・トリオ、MinutemenのMike WattとGeorge Hurleyと共に結成した即興ロックバンドUnknown Instructorsだ。
Sonic YouthのKim Gordonが「1980年代のロックはギターを弾くことがすべてだったが、1990年代はアンプを弾くことがすべてになってしまった」と語ったのは有名な話だ。ダイナソーJr.のJマスキスは、グランジ時代のミュージシャンの中ではめずらしく、その両方を驚くほどうまくこなした。さらにマスキスは、この10年間で最も心に残る不朽の名曲もいくつか作っている。『The Wagon』のような練り上げられた切実なバラードでも、『Start Choppin'』のようなリフを基調としたストンプでも、彼は常にフィードバック・ノイズの壁を越えてフェンダーのJazzmasterを響かせ、舞い上がるような、そしてまったく予想外のメジャースケールのギターソロを聴かせてくれた。そして、それは彼のシグネチャースタイルとなった。
マスキスの自宅がダイナソーJr.の音楽そのものを体現しているのは当然のことだ。バンドのサウンド形成に役立った機材が、彼の音楽への献身の強さを表しており、明るくてユニークな雰囲気の部屋だ。マスキスは世界中をツアーしているが、ツアーが終わるとマサチューセッツ州のアマーストにある自宅へいつも戻ってくる。アマーストは、ダイナソーが1985年に最初のレコードをリリースする前に、スタート地点となった学生の街だ。ベーシストのLou BarlowとドラマーのMurphを含むオリジナルメンバーでレコーディングを続けるマスキスは、自宅の思いもよらない場所でインスピレーションを得ている。しかし、それこそが30年間ダイナソーのファンを惹きつけてきたものであり、予想外のことをやってのけることへの大きな期待感なのだ。
普段はどこで曲作りをしていますか?
たいていはキッチンです。
なぜキッチン?
わからないんだけど、子どもの頃からずっとキッチンで生活をしていました。昔住んでいた家にはキッチンにテレビがあって、夕食を食べながらテレビを見るんです。それ以来、いつもキッチンに座っていて、そこが自分の過ごす場所のような感じです。
インテリアのスタイルを教えてください。
僕と妻のふたりだけなんですけど、彼女とはインテリアのスタイルが違うから日々戦いみたいなものですね。
レゴやスケートボードのデッキなど、たくさんのモノがありますが、キープするモノと手放すモノをどうやって決めていますか?
僕はモノを溜め込む傾向があるから、マメに処分するようにしています。だから本当に好きなものだけが残るんだと思います。
階段の下に素敵な『ハロルドとモード』の映画ポスターが貼ってありますが、CAT STEVENSの『IF YOU WANT TO SING OUT, SING OUT』をプレイしたことはありますか?
子どもの頃にこの映画を観て以来、この曲が好きで。プレイしたり歌ったことはないけれど、ときどき口ずさむことはありますね。
レコードコレクションの中で、最も意外なレコードは?
レコードの整理をするのを手伝ってくれた男性のことを思い出します。彼は若いパンクっぽい人でした。僕はパンクのレコードをたくさん持っているんだけど、Amy Winehouseのレコードは彼にとって奇妙なものとして映ったみたいです。
あなたが育ったパンクシーンのレコードはたくさん持っていますか?
アマーストに必ずしもシーンがあったとは言えないけど、僕のコレクションは僕が若い頃に買ったレコードばかりです。<Dischord>や<Touch'n'Go>のようなハードコアのレコードは、この辺りの店には置いていなかったから、いろいろなレーベルからメールでオーダを入れて買っていました。他のジャンルのレコードを売っているディストリビューションはありました。僕の町の店には良いコネクションがあって、その店主はよくイギリスにレコードを買いに行っていたので、僕は彼からイギリスのパンクをたくさん買っていましたね。
思い入れがあったり、単にレアだからという理由で大切にしているアルバムはありますか?
Wipersのファーストシングルを買ったのを覚えています。当時、一番お金をかけたレコードだったかもしれません。イギリスで見つけたんだけど、7インチで50ポンドくらいしました。かなり昔のことですね。それと、Negative Approachの7インチも。
「パソコンで何かをちょっと見たり、キッチンで曲を書いたりしていることが多いですね」
ダイナソーJr.はフィードバック・ノイズと轟音のギターで知られていますが、大音量で演奏をして隣人から苦情がきたことはありますか?
音の苦情がきたことがないんです。隣人はここに住んでいる他のみんなが嫌いだから、僕たちのことが好きなんだそうです。だから、僕たちがここに住んでいることを喜んでいますし、隣人の彼女は音楽を気にしないみたいです。別に夜遅くまで演奏しているわけでもないし、街中に住んでいるので、特に問題になったことはありません。
家で過ごすときは音楽を聴いていますか?
たぶん、一日中音楽を聴いていることはないかな。車の中ではたまに聴いています。レコードもかけることもあります。でも、大抵の場合はパソコンで何かをちょっと見たり、キッチンで曲を書いたりしていることが多いですね。
最近は何を聴いていますか?
トロント出身のMatthew “Doc” Dunnという人がすごく好きで。彼は何枚かアルバムを出していて、でもSpotifyにはないと思うけど、Bandcampにはありますね。ほんの数ヶ月前にトロントのレコード屋で彼と一緒に演奏したんだけど、そのときの動画もあります。
フェンダーのJazzmasterを弾くことで知られていますが、そのギターの何が魅力なのですか?
僕が持っていて、弾き方を一から学んだギターだからです。だから、そのサウンドがダイナソーのサウンドになったというだけ。そして僕のギタースタイルはこのギター、Jazzmasterを中心に築かれたようなものなんです。今でもほとんどのライブで使っています。
家にはほかにどんなギターがありますか?
いろんな音を出すために、たくさんのギターを持っていますね。曲を書いたり、違うアイディアを思いついたりするために、ギターによって違う弾き方をしているんです。レコーディングでは’58 Telecasterでリードを弾くことが多いです。多分それが僕のお気に入りのギターかな。
ツアー中に買ったおみやげで、特別な意味があるものはありますか?
難しい質問ですね。思い浮かぶのは、最初のツアーで手に入れたBig Muffペダルくらいかな。今でも使っています。