Shirley Kurata(シャーリー・クラタ)はロサンゼルスを拠点とするスタイリスト兼、衣装デザイナーだ。彼女の作品はテレビや映画、広告キャンペーン、ファッション誌、ランウェイやステージなどで見られ、その中には「The Voice」やRodarte、Kenzo、Gucciの広告キャンペーン、さらにA$AP Rockyの『Babushka Boi』などのミュージックビデオにも登場している。また、ライフスタイルショップ<Virgil Normal>の共同オーナーでもある。
「チルしたいとき、踊りたいとき、楽しませたいとき、ハッピーになりたいときなど、音楽はどんなときでも家の中で欲しいムードを高めてくれます」
スタイルと音楽は、ほとんど言葉では言い表せない関係にある。私たちは音楽を聴くとき、そのサウンドのパワーだけでなく、その音楽に付随するイメージにも感情的に反応をする。David Bowie、Madonna、Brian Eno、David Byrne、彼らはそれぞれ、曲作りやパフォーマンスだけでなく、アイコニックなスタイルにおいても自分たちのクリエイティブな世界を表現している。BeckからJenny Lewis、Tierra Whack、Pharrell、Bright Eyesまで、さまざまなアーティストやブランドに、独自のレトロフューチャーなスタイルを通じてインスピレーションを与えているロサンゼルスのスーパースタイリスト、シャーリー・クラタもまた、各アーティストたちからユニークなインスピレーションを得ているのだ。高予算のミュージックビデオでも、雑誌の見開き写真でも、アフロパンク・フェスティバルやサウス・バイ・サウスウエストでの最高なパフォーマンスでも、彼女のスタイリングがアーティストをより魅力的に見せ、音楽をより印象深いものへと変えてくれる。
だから、シャーリーの住まいが音楽のインスピレーションの宝庫であることは驚くことではないだろう。壁一面のレコードからターンテーブル、カセットプレーヤー、ラジカセのコレクションまで、丁寧にスタイリングされた彼女のロサンゼルスの家で、音楽は欠かせないデザイン要素となっている。シャーリーの選ぶ音楽は、彼女の個人的な美的感覚と同じように、幅広い年代や世界中のさまざまな文化から影響を受けている。しかし、シャーリーは生まれ故郷であるロサンゼルスの明るくカラフルな雰囲気を今もなお持ち続けており、シルバーレイクにあるライフスタイルストア<Virgil Normal>の経営にも携わっている。ロサンゼルスは創造性とチャンスの世界を広げてくれるが、同時に「望むならリラックスして過ごせる」場所でもある、と彼女は語ってくれた。まるで自分の家のことをそう表現しているかのようだ。
家はどんなスタイルですか?
ミッドセンチュリーモダン、スペースエイジとフォークアートを融合させたスタイル。
音楽は家の中でどのような役割を果たしていますか?
チルしたいとき、踊りたいとき、楽しませたいとき、ハッピーになりたいときなど、音楽はどんなときでも家の中で欲しいムードを高めてくれます。
音楽を聴くときのお気に入りの場所はありますか?
ダイニングテーブルです。
レコードをたくさんお持ちですが、今ターンテーブルの上にあるレコードは?
De La Soul の『3 Feet High and Rising』です。
ターンテーブルと小さなラジカセをいくつかお持ちのようですが、これらについて少し教えてください。
子供の頃、80年代のピンクのシャープ製ラジカセを持っていて、とても気に入っていました。残念なことに兄の車から盗まれてしまって、それがどんなに悲しいかを友人たちに嘆いたことがあったんです。すると、友人たちはフリーマーケットで別のピンクのラジカセを見つけ、私の誕生日にプレゼントしてくれたんです。それと若い頃に作ったミックステープをまだ全部持っているので、それを聴くためのカセットテーププレーヤーが必要で。あと、スペースエイジなデザインのオーディオ機器が大好きなんです。例えば泡のような丸いターンテーブルも持っているんですけど、これはリスニング用というより、インテリアとして見せるためのものですね。それから、実際に音楽を聴くための新しいターンテーブルも持っています。
レコードコレクションについて教えてください。
60年代、70年代、80年代のレコードをたくさん持っていますが、特に80年代のものが多いです。1979年から1981年の80年代初期のものが大好きで、シンセ、ファンク、ブギー、ディスコ、ノー・ウェイブ、ポスト・パンクが融合していた時期ですね。その時期に素晴らしいレコードを出していた私のお気に入りのバンドには、ESG、OMD(Orchestral Manoeuvres in the Dark)、YMO(Yellow Magic Orchestra)、Joy Division、Talking Heads、Orange Juice、Gary Numan、Liquid Liquidなどがいます。
普段どうやってレコードを見つけていますか?
パサデナ・シティ・カレッジのフリーマーケットに行くのが好きで、そこには結構いいレコードを売るディーラーがいるんです。あと、日本に行ったときは必ずたくさんのレコードを買いますね。だって日本には最高のレコードショップがあるから。また、ここL.A.にあるお気に入りのレコードショップにも足を運んでいます。例えば<Record Jungle>や<Permanent records>とか。そして私のショップ<Virgil Normal>の裏にある小さなレコード屋<Bueno Records>でも、素晴らしいレコードをたくさん買っています。
時間帯によって聴くレコードは違いますか?
仕事をしているときは少し静かなメロディで、眠くならない程度にリズムのある音楽を聴くことが多いですね。例えばBrian Eno、日本のシティポップ、 Shoegaze、Stereolab、Kevin Ayers、The Feelies、Feltといった音楽です。夜になると猫たちとダンスセッションをすることがあるんですけど、そのときは80年代のフリースタイル、初期のMadonna、日本のディスコ、イタリアのディスコといったダンスミュージックをよく聴いています。
「人をスタイリングすること」と「自分の住まいをスタイリングすること」の違いは何ですか?
住まいをスタイリングするのは、自分自身とそこに住む人々や動物たちを喜ばせるためであって、すべての住人が快適に過ごせるようにするため。人をスタイリングするのは、その人を喜ばせ、その人の個性を表現するためです。住空間をスタイリングすることは、もっと自分本位であるのに対し、人をスタイリングすることは「サービス」の一環という気がします。
ロサンゼルスでの生活からどのような影響を受けていますか?音楽、アート、デザインカルチャー?
ロサンゼルスからはとても影響を受けています。文化やアートが豊かな都市だから。でも、ロサンゼルスはのんびりとしていてチルな町でもあるんです。山やビーチ、砂漠にも囲まれているから、アウトドアライフも身近にあって、これはクリエイティブな生活を送るうえでは重要です。L.A.は見どころややるべきことがたくさんありながら、リラックスして過ごすこともできる素晴らしいところだと思います。
あなたの家は現代的でありながら、過去に思いを馳せるようなノスタルジーな雰囲気も持っていると思います。ファッションや音楽で特定の時代を懐かしく感じることはありますか?
スマートフォンやコンピューター、たくさんの番組が見られるテレビなど、テクノロジーに囲まれていなかった時代。ようするに、物事がもっとアナログで孤立していなかった時代を一番懐かしく感じます。
あなたが思うL.A.のサウンドを表現している曲は何ですか?
阿川泰子の『L.A. Night』です。
自分の家のエネルギーをよく表現しているレコードは何ですか?
Tom Tom Clubの『Tom Tom Club』です。