Life in stereo - Theresa Wayman & Yuki Tsujii インタビュー
ミュージシャンという職業は、私たちから見れば終わりのないパーティーの連続のように思えるかもしれないが、実際にはかなり不安や孤立感を伴うものかもしれない。Marshallの『Life in Stereo』シリーズでは、Warpaint(ウォーペイント)のTheresa Wayman(テレサ・ウェイマン)とBo Ningen(ボー・ニンゲン)のYuki Tsujii(ユウキ・ツジイ)にインタビューし、ツアー中に築かれた友情がどのように彼らの人生と仕事を支えているのかを探る。
ツジイユウキは自身のバンド、ボー・ニンゲンと友人であるテレサ・ウェイマンのバンド、ワーペイントとの間にあるつながりを、ある種の形のない魔法のようなものだと考えている。「それははっきりしたものはなく、おそらく目に見えるものでもないんです」とユウキはいう。「僕たちだけが共有しているものです」。ボー・ニンゲンとウォーペイントは「同じコインの裏表」のような異なる音楽スタイルを持ちながらも、どちらもギターミュージックへの愛情を持っており、革新的で創造的なアプローチを取っている。ロンドンを拠点に活動する日本の4人組バンド、ボー・ニンゲンは、奇抜でヘヴィなサイケデリックなサウンドを作り出し、一方アメリカのウォーペイントは洗練されたポップスをミックスしている。
コーチェラ・フェスティバルで初めてワーペイントのライブを観たときのことを思い出して、ユウキは興奮を隠しきれずにいた。「ちょうど夕暮れ前という完璧なタイミングだったし、セット終盤のジャムセッションの盛り上がりには度肝を抜かれました」と彼は熱く語る。一方、ツアーマネージャーからボー・ニンゲンの音楽を紹介されたテレサは、同じようにすぐに感銘を受けたという。「彼らは素晴らしくて、ちょっと手の届かない存在に感じましたね」とテレサ。「何か本当に意味のあるものを掴んでいるようで、音楽を作るならこうあるべきだと思いました」と彼女は話す。多くの人たちと同じように、彼女もまた、写真やステージでのボー・ニンゲンの素晴らしさに魅了されたのだ。「長い黒髪をなびかせ、赤い服を着た彼らはとても印象的でした」。興味深いことに、テレサは今になって彼らの外見は別世界の生き物のように思えたため、個人的なつながりを見つけるのは難しいかもしれないと思ったことを振り返っている。さらに、実際に会う前にその人の音楽に出会うことで、その人が日常ではどんな人なのかという期待が生まれるからだと付け加えた。「彼らが作りだすアートが、ある特定のイメージを伝えているんです」とテレサ。「ボー・ニンゲンは、私が彼らの音楽を聴いたときと同じように手の届かないような人たちで、独自の世界にいるような人だと思ったんです」。
幸運なことに、ユウキとテレサは実際に会った瞬間、すぐに意気投合した。お互いに対する敬意の種が蒔かれ、成功した2つのバンドがロンドンの<ラウンドハウス>でのギグで再会するまでに、それほど時間はかからなかった。その出会いはつかの間のものであったが、2人は特別なつながりを感じたという。
それ以来、2人はツアーのスケジュールが合う時には一緒に出かけるようになった。ユウキは、日本で特にお酒を一緒にたくさん飲んだことを思い出す。「ワーペイントが僕の故郷近くの大阪で演奏したとき、ちょっと飲みに行ったんです。僕たちは日本酒をすっかり飲み過ぎてしまいましたね」とユウキ。そんなパーティーの話はさておき、ボー・ニンゲンとウォーペイントのコラボレーションは実現するのだろうか?じつは、テレサがロンドンを訪れてソロセットのライブをしたときに、すでに共演しているとユウキはいう。「そのセットではより雰囲気のあるサウンドでプレイができて、とてもうまくいったんです。ショーの後に『じつは僕がギターを弾けるって知ってた?』って言ったんです。だって、普段ボー・ニンゲンではもっと激しく演奏して、ギターをノイズジェネレーターのように扱っているので。テレサは驚いて『もっとそうやって演奏するべきよ!』って言われたんです」とユウキは話す。ユウキにとってのこの特別な瞬間は、テレサにはクリエイティブなコラボレーションを通じて感じる特別なつながりの一部分なのだという。「誰かとクリエイティブな仕事をすることは親密な関係を築き、お互いを知るプロセスを加速させると思います」とテレサは語る。「何かを創作するとき、自分自身の一部やアイデア、感情をさらけ出すことになるからです」。
このような自分自身をさらけ出すことは創作活動において喜びとなる一方で、アーティストを精神的に脆弱にすることもある。ツアー中には、プレッシャーでこのような問題がさらに悪化する。ユウキもテレサも、奇妙な孤独感や極端な感情に対処する際、バンド間の連帯感が大きな助けになると話す。ギグの興奮とアドレナリンが引き起こす感情の高まりと、そして移動と待ち時間の退屈さとの間で、常に感情がシーソーのように浮き沈みがあるのだそう。「友情がクリエイティブな生活を乗り越える助けになると思うんです」。テレサは続ける。「世界中に家族がいるという感覚も本当に素敵で、睡眠を犠牲にしてでも価値があります。同じことを経験する仲間は安心感を与えてくれるし、ひとりじゃない!と感じさせてくれるんです」。ユウキはさらに踏み込んで、自分にとって大切な友情が、現状への不安を和らげるのに役立っているという。ユウキは語る。「クリエイターとして、この不安定で厳しい世界を生き抜くことはとても過酷なこと。人生は醜くて苦しいものだけど、それでもそこに美しさを見出せないわけではない。友情はその稀な美しさのひとつだと思うんです」。
最後に2人が会ったのはいつですか?そのとき何をしましたか?
テレサ:5月にロンドンの<ピクル・ファクトリー>で、初めてTT(テレサのソロプロジェクト)のライブをやったんです。ユウキやほかの友達も来てくて。本当に楽しかったですね。ライブ後に近くのバーでお祝いをして、その後は私たちのAirbnbで過ごしました。そこでユウキに髪の編み方を教えたんだけど、編めるようになったかどうかはわかりません。Bugsy Malone(バグジー・マローン)を初めて知って、『Tomorrow』を何度も繰り返し聴きました。それはワイルドな夜でしたね。
ロンドンの会場<ラウンドハウス>で出会ったとき、なぜすぐに打ち解けることができたと思いますか?
テレサ:お互いに共通の友人がいたことが、私たちを結びつけるのに役立ったと思うけれど、だからといって簡単に友達になれたとは思わないんです。私たちには共通点がたくさんあって、住んでいる地域は違っても似たような生活をしていると思います。たぶん、私たちはソウルメイトなんじゃないかな。
ユウキ:ワーペイントのツアーマネージャーで親友のロビンから、アフターパーティーで紹介されたのを覚えています。短い時間だったけど、なんとなくフィーリングが合ったんだと思います。テレサが連絡先を教えてくれたから、ボー・ニンゲンの最新のアルバムを送りました。
一番の共通の思い出は?
テレサ:グラストンベリーフェスティバルでのライブの後、ワーペイントのバスで一緒に過ごしたことです。パークステージのヘッドライナーを務めたばかりだったんだけど、翌日フランスかどこかでライブをするために、いつものように移動しなければならなかったんです。ユウキと他の数人の友達も一緒にバスに乗って港まで行って、そこからロンドンに戻りました。
テレサは動画の中で、OutKast(アウトキャスト)を重要なインスピレーションの一つとしてあげていますが、あなたのインスピレーションはどこから得ていますか?
ユウキ:最近は特定のアーティストやミュージシャンからインスピレーションを受けることはあまりなくて、映画や本の中の特定のシーンから影響を受けることが多いですね。サウンドトラックも重要なインスピレーションの要素です。例えば、Mica Levi(ミカ・レヴィ)の『Jackie』、Jonny Greenwood(ジョニー・グリーンウッド)の『Phantom Thread』、武満徹の『利休』などです。
どんな音楽で絆を深めますか?
ユウキ:間違いなくBjork(ビョーク)です。
テレサ:私たちはさまざまな音楽が好きなことで絆を深めていますね。
お互いに言ったことの中で一番使える、または優しい言葉は何ですか?
テレサ:ビールのお代わりを持ってこようか?
もし午後に時間があってお金に糸目をつけないとしたら、友達との理想のデートは何ですか?
ユウキ:プロセッコを買って、公園に行ってチルするかな。
テレサ:トロピカルな島の小さなコテージに音楽スタジオを建てて、音楽を作ったり、泳いだり、ビールを飲んで新鮮な魚を食べるとか!それはとてもインスピレーションいっぱいの環境になると思います。
ユウキの一番の取り柄は?
テレサ:ユーモアのセンスです。
普段一緒にいるときは何をしていますか?
テレサ:思い出作りかな...。
ユウキがすすめてくれたベストミュージックは?
テレサ:Tirzah(ティルザ)の『Devotion』です。
テレサを曲に例えると?
ユウキ:Sibylle Baier(シビレ・ベイヤー)の『Colour Green』です。
彼女の最大の取り柄は?
ユウキ:ステージ上でのテレサの存在感。自信に満ちていて真剣でありながら、同時に穏やかでハッピーなところですね。
普段一緒にいるときは何をしていますか?
ユウキ:ライブで会うことが多いので、基本的にはお酒を一緒に飲むことが多いです。
テレサがすすめてくれたベストミュージックは?
Yuki:Black Uhuru(ブラック・ユフル)のアルバム『Red』です。僕はレッドにまつわるものが大好きだから。
AUTHOR LUKE TURNER PHOTOGRAPHER LIBBY BURKE WILDE